美濃の国漫遊記

GW、もちろん「ブ」巡りや目録で注文した本が届いたりと古本から離れない生活をしていましたが久々に寺社仏閣巡りなんぞも、とはいえ時間的に遠距離は無理だったので近場ばかりの美濃の国漫遊記。
まずは関市の新長谷寺。別名吉田(きった)観音の名称もある建物の多くが重要文化財源義朝ともゆかりのある名刹なのですが注意書きの看板がやたら立てられていてここは中学校か!と突っ込みを入れたくなるお寺です。なんか見ているだけで怒られそうでおどおどしそうなくらい。恐る恐るご朱印もらおうとインターホンを押すも誰も現れず。本堂の中に子供のおもちゃとお菓子が出しっぱなしでしたのでお孫さんと裏でお昼寝中だったのかも。長居しづらいお寺でした。
お次は富加町にある清水寺白洲正子の『十一面観音巡礼』にも登場するお寺ですがここのことをどうやって知ったのだろうと疑問に思うほど見つけにくいところにありました。小さな谷を登ると二天門はあいにく修理中。そこからまた数十メートルで本堂と岩から落ちる滝もあり清水寺の名前に納得がいきました。本家と同じように坂上田村麻呂にゆかりがあるようですがこれは後付けかも。
それから日龍峯寺(高沢観音)。ここはここで美濃の清水寺という言われ方をしているようですが言われる所以は一目でわかる清水の舞台。本家の舞台は堅牢でためらうことなく歩けるのですが板のきしみ具合がなんだか危ういような……柵も低めなので縁へ近寄るのが相当怖い。古代朝廷へまつろわぬ者飛騨代表の両面宿儺が美濃国へ出張って蛇退治して建立したという伝説もあるようですが、もう一つ北条政子にもゆかりがあるようで大河ドラマ「清盛」で政子を演じた女優杏のサインが本堂に貼ってありました。
数年前テレビで境内を案内してくれると紹介された猫のマロンはお昼寝中。しかし名前を呼ぶとちゃんと答えてくれるところはさすが寺猫。

ここからは西美濃編。花菖蒲の時期にはまだ早いですが大垣の曽根城公園。曽根城は稲葉一鉄の居城だったそうですが今は面影はなく池ではのんびり釣りをしている人が何人かいるのとサギが数羽いるのみののどかなところ。ハリヨの生息地でもあります。4、5センチくらいの大きさですが泳ぎ方が何となくユーモラス。淡水魚好きにはたまりません。芝生の中央には幕末の漢詩梁川星巌張紅蘭の銅像が立っていますがこのあたり出身で幼いころは公園隣の華渓寺で学んだそうです。小さな資料館もありますが無人で電気も自分でつけなければいけません。訪問する人もあまりいなそうなのが残念です。どうしても頼山陽なんかと比べると知名度が低いので仕方がないのでしょうか。
金生山といえば石灰を掘り出す山というイメージしかなかったのですが、実際外観はもうかなり抉られそのうち平地なるもんだと思い込んでいました。まさか山頂に寺院があるなんて……ということで明星輪寺へ。赤坂宿の狭い道から高校生がランニング坂を一気に駆け上がると別天地がありました。山門の仁王像もなかなか立派です。大垣藩主戸田氏の九曜紋が見えることから庇護を受けて栄えていたのでしょう。駐車場にもこれまで紹介した寺の中でも最多の七台か八台はありました(いかに地味なところばかり回っていたかわかりますね)境内もかなり整備されて心地よく展望も抜群。本堂の中の窟屋に本尊があるといういかにもパワースポット的な雰囲気を醸し出していました。ここはいい。
石灰関係の工場地帯を抜け青墓へ。不気味な地名ですが平安末期は宿場で栄えたところです。ここにある円興寺は平治の乱で敗れた源義朝ご一行様のうち次男朝長の墓があるところ。と言っても寺は山から下りてきていますが墓はそのままというわけで本来なら登らなければいけないのですが根性なしなので省略。松尾芭蕉は苔うずむ何とやらと一句詠んでいたはずですがこれも思い出せないので省略。
省略ついでに美濃国分寺や垂井の竹中氏陣屋、お墓のある禅幢寺なんかもまた次の機会にしておきましょうか。明日も早いことだし。というわけで最後は駆け足になりましたがもう一つ最後に最近買った本を並べておきます。

小説トリッパー編『この文庫が好き!ジャンル別1300冊』朝日文芸文庫
澤瀉久孝『万葉古径』全三巻 中公文庫
小林紀晴『homeland』NTT出版
小林紀晴『Tokyo Generation』河出書房新社
杉山茂丸『児玉大将伝』中公文庫
藤沢周平『白き瓶 小説長塚節』文春文庫
岡留安則噂の真相編集長日誌?』教養文庫
安岡章太郎『ガラスの靴 悪い仲間』講談社文芸文庫
宮城谷昌光『風は山河より2』新潮文庫
宮城谷昌光『風は山河より5』新潮文庫
西村伊作『我に益あり』紀元社
西村伊作『我子の教育』文化生活研究会
高階杞一『早く家へ帰りたい』夏葉社